飽和


窓を開いたのは彼でした。二人の楽園に酸素が流れ込み、青い空気が肺を毒していきます。このまま、殺されてしまうのだと思いました。「一緒に行こう」と彼は言いました。「大丈夫だ」とも。外の世界は色に溢れ、窓枠に触れた自らの指さえ、初めて見る柔らかな白を湛えていました。頬を風が撫でていく感触に鳥肌が立ちます。冷たく凛としたものが、夢心地を壊していきます。堪らず窓を閉じようとした瞬、彼が笑っていることに気付きました。瞼を降ろし、肋をいっぱいに広げて呼吸していました。いけない、いけない、本当に恐ろしいのは窒素でも塩素でも硫化水素でも二酸化炭素でもないのです。そして私は、またこの部屋に火を放ちました。






酸欠参加作品

クライオニクス(by色)





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